落椿
リリー



 靴音が恋を追いかける
 パダムパダム と
 絶え間なく追いかける

 その 切なさ 
 激しさから
 逃げようとするのだが
 もはや息が切れてしまった

 恋はほのぼのと燃えて
 尽きる事のない声を
 反響させる
 ゆれ騒いでいた大気が突然
 凍りついた様に停止する

  すねた一輪の椿は重たく落ちた

 雨の夜に
 靴音が恋を追いかけると
 その都度 空が少しずつ遠くなるので
 落椿は あかい唇となって
 舞い上がる

 見てごらん
 今その紅い唇は
 曇った 都会の空を覆い
 星をかくし
 大空をぬりつぶしていくだろう

 


自由詩 落椿 Copyright リリー 2023-08-05 20:10:14
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