soft_machine

 こわい箇所だけ集めた 試写会のような
 夢
 夢は ひろい鏡に浮かんだ
 あおじろい入れ子

 口の中はレトロ
 ほの昏く暖色な
 どことなく固定された感ただよう炭酸臭
 安っぽいシートの
 固くなった焦げ目
 天から降ってくるような
 きつく結ばれたお弁当
 豪快に穴を開けられた きっぷを折れば
 舞台は 無人島
 または 無人駅
 無人の山の日もある その頂で
 誰もいなければ 泣けるから
 刃を躰にくい込ませ
 やっと罵る
 まだ 何も はじまってすらいないのに
 いつだって 終劇気分
 隣のきみは知らんぷり
 じっと 見つめると
 不意に 居眠る

 たばこの筋がゆれ
 次第に異臭がたかまり
 目覚ましが鳴る 試打後、空腹を伴った
 針のカチリまで 時を遡って
 全身が撥条のように痙攣し
 弾ける 噴水のきらきら
 弱る蝉
 また いつもと変わらない
 今日に始まっていた夏

 夢


 


自由詩Copyright soft_machine 2023-08-05 09:20:18
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