青い影
soft_machine

 ゆれる ぬけがらの重さ
 ひとつひとつ 声に彫られた
 ふるい幹のこまかな傷と

 蝉と烏 青を奪いあう
 にぎやかな今日

 不意につまづく
 日傘をさした子づれの伝道師が
 扉の向こうに立つ
 その 影の間に起こる
 ほんのわずかな会話と
 固く 長いためらい

 水がまかれた
 丘の向こうで
 糸を切られた
 風鈴が鳴って
 鳴り終わって 落ちる
 ひかりだけ
 何もかもを知っていて

 目隠しされた鬼が いっぴき
 つぎつぎ叩かれている
 群衆は
 白昼になると
 ことばをつかい誤り
 わたしも ただ、見ているだけ

 ちがう、ほんとうは
 こっそり
 ほくそ笑んでいるのだ
 この今も
 くちびるを濡らしながら

 空を青いと思いながら
 こまかく震えながら

 
 


自由詩 青い影 Copyright soft_machine 2023-08-04 10:38:15
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