小悪魔
リリー

 又 戻って来た
 物憂い瞳で 上手く口説き
 心をさらいに来る悪魔

 親しげに抱きしめてくる腕
 あたしがいつも
 浮き草の様に揺れ動いているのを
 充分に知っている男

 取りすまして
 あくどい唇も持たないし
 お酒が好きで
 少しばかりニヒリストぶって
 やさしげなほほえみを持ち
 くちづけがじょうず
 そんな 
 あなたに ひかれては
 あたしのはめつ

 不安と
 恐れと
 例えようのない 夜のかべに
 ほんろうされる
 それなのに

 朝、鏡に映した顔は満ち足りて
 光っていた
 あなたが あたしに与えたものはそんなに
 大きかったのか

 


 


自由詩 小悪魔 Copyright リリー 2023-08-03 09:41:38
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