きこりとスゥイーパー
菊西 夕座

   ついにわたしの頭から木こりは離れなかった
   そこでわたしは木にいった
   「切ってしまうぞ」と
   しかしそれはわたしのもっともお気に入りの四季であり
   秋だった
      ――し木はめぐり、あ木がみのる――

きこりが木に凝る
スゥイーパーは見ている じっとみている
木の精かもしれない
スゥイーパーは正面で じっとみている
木のすきまをかたどる
きこりは死期をさとる
スゥイーパーはこくりとする うごかない
きこりが気を張る
スゥイーパーは手をださない じっとしている
きこりが木を見る
スゥイーパーも見ている じっとみている
きこりが木を切りたおす
スゥイーパーはおきない 無を注視している
きこりが気をくばる
スゥイーパーはしらない 無に帰着している
木が切り株になる
――気がつけば 切り株にもたれている
スゥイーパーが木を切る
きこりは見ている じっとみている
木の好きがうまれる
きこりは正面で じっとしている
スゥイーパーが手を切る
きこりはぎくりとする うごかない
手首と血が こぼれおちる
きこりは手をださない じっとしている
スゥイーパーが傷口を見る
きこりも見ている じっとみている
ススゥイーパーが気をくばる
きこりはしらない 全の支配を
手が切り株になる
きこりはしらない ゼロの反射力(ちから)を
血脈が根をはり 地にそまる
きこりはおきない 隙をみている
傷口に木を移植する
きこりは木を失っている
スゥイーパーが木を伸ばす
きこりは手をのばす 喪失の森へ
――気がつけば 切り株にもたれている
スゥイーパーは揮発し 消えさっている
きこりは木を切り出だす
   鳥なき、花さき、雲わき、風ふき
      光かがやき、影そこふかき、空(あき)のきわみへ――


自由詩 きこりとスゥイーパー Copyright 菊西 夕座 2023-07-29 23:48:34
notebook Home 戻る