失う夏のソネット
佐々宝砂
日差しの刃に斬られ
だらしなく溶けてゆくかき氷の
まだ冷たいスプーンをなめながら
またひとつ星がおちたのに気づく
小豆とぎと河童と
座敷わらしとあと誰だっけ
訃報を連絡するために
黴の臭いの住所録をひっくり返す
身に沁む季節がくる前に
わたしたちは失い
喪失の季節を味わう前に
わたしたちは忘れ
大切なことはなにもないか
すべてが大切なことなのか
自由詩
失う夏のソネット
Copyright
佐々宝砂
2023-07-28 20:01:50