ザザザ
soft_machine

 ホントに海なんだって
 あるつってんだよね車座のばあちゃん連が
 あの丘をこえたらザザザ

 と、むかし たぶん一度きり
 お波とお供からあっとさらわれると云い
 舟のり達なら躊躇うわずかの内で
 見上げる鳥達なら赤道の勢いで

 すると霧笛は
 空へ青く染められ
 或はほんのわずかな響きを余らせ
 くすんだ蛍光音色で
 櫂に漉かれた水の旅程を言祝ぐ
 それも呪いと
 よく似た容貌だから
 声を挙げるのも
 もう何も怖くもないよ、と
 これも一種の考えようさ

 それが、やっぱり噂ではね
 水と瞳にあふれた毎朝が
 恋しちゃったんだってさぁ
 ままならない関係のね

 それもまた骨を抜かれた話だわね
 音楽の足りない水鉢みたいな星々の夜々だから
 掘れば必ず何かに出会える

 だったら、せめて狙いは外さないで
 気持ちを薄めないで
 その声を飲み干したまま
 互いを確かめ合えるまで
 塩のひと粒を足していきましょうや
 なみだもひと転げ 筆にひたして

 ザザザは舐める
 さらさらの砂に驚いた
 水猫の最後にはまた舞うから
 いついつまでも舞い踊るから





自由詩 ザザザ Copyright soft_machine 2023-07-28 16:37:54
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