雑踏
リリー
だれも居ない大学の構内に
緑だけが 大空を指しておいしげる
私はそれを見るのが好きだった
雑踏の中に居る時には
親しく心に顔をみせるのに
一人になって 悲しい思いの時
貴方は その息づかいを示さなかった
いつか それに慣れっこになって
雑踏の中では心楽しく
一人で居る時は恐ろしい思いにさいなまれるのを
当たり前と思うようになった
暮れ方の空気が
乱れるのを恐れる様に
緑 ふきあげる
大学の敷地内の幾種類もの樹々
そこに空は
みえないけれど
ほんのすきまが、
何と明るい
私は明るい娘だと言われるようになった