降る雨の
リリー

 
 降る雨の音の彼方
 何か物憂いささやきがある

 降る雨の
 或る古い影が
 街頭へ彷徨い出て
 騒音の中で狂い始めた

 一心に 鎮めようと
 声をかけたが
 空を跳ね 地をうがち
 私の声など一にぎりにつぶしてしまった

 辺りの闇が急速にまわり始める
 何故だか
 私はかすかにほほえんでいた

  (これが 分身なのか?)

 瞳をとじてみると
 美しかったのだった

 瞳をとじてみれば
 心底優しい気持ちになって誰かに
 抱いてもらいたかった
 一人の時は こんなに素直なのに


 降る雨の音の彼方
 閉じし心の虚しき重さか

 
 


自由詩 降る雨の Copyright リリー 2023-07-23 06:08:16
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