一片の空
リリー

 お湯を沸かしながら
 まだ眠い気だるさには
 モカブレンドのドリップコーヒー

 昨夕スーパーの陳列棚に一袋だけ
 お買い得商品のプライスで残っていた
 この一杯の 目覚めが心地良い

 リビングのインテリア時計が穏やかなメロディーで
 午前六時を告げる
 テレビのニュースを聞きながら

 コンロにかけていた小鍋の玉子二個を
 ボールに移し冷やすと
 茹でたまごの殻は指先でツルリ
 剥けてくれる気持ち良さ

 まな板でそれを半分に割ると
 程よい半熟
 黄味の美味さを引き立ててくれる
 赤穂の焼きジオ

 メークアップの美しく出来ない私は
 今朝もありきたりな装いに
 お気に入りの柔軟剤の香り漂わせ
 夏だからオレンジ系のルージュを選んでみる

 玄関を出て見あげれば
 そこに
 小さな心地良さが一片の空となって
 私の目に映りこむ
 


自由詩 一片の空 Copyright リリー 2023-07-20 12:43:42
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