朝へ 朝へ
木立 悟
空を海へ引く光の紐
雨と機械の音が重なり
遠い話し声となり
さらにさらに遠去かる
音のはざまに見える陽
すべては明るく
白いものの前に浮かんで見える
だが暗がりは 別の径に逃れつづける
彩雲が浮かぶ水に
雨が落ちている
水紋の会話がひゅちひゅちと
途切れることなく沈みゆく
流木が転がり 花になり
打ち上げられ 群れを作る
雪を融かす雨
雨が洗う玩具
階段を流れる窓の音
踊り場に立つ光の他者
毎日 死に
毎日 生きる
花 水たまり 涸れる
夜 手のひら ひらく
地に映る月をついばむ鳥
岩つたう水 葉の上の街
この歩みの行き着く先を
誰がどのように決めるのか
水はふたつ
人はひとり
夜の晴れの冷たさが降り
星の揺らぎの声も降る
海に浮かぶ水の歯車
朝の光に消えてゆく