撃鉄
たもつ



雨上がり、路面電車が
湿りの中で発光したまま
緩やかなカーブを破壊していく
何の変哲もない病室に
復員したばかりの真昼と青空
そこでは誰もが幸せそうに
夕食に出た鰊料理の話をしている
後ろ手で扉を閉めると
総身も稜線も払った金の匂いがして
向日葵畑の撃鉄だけが
夏の行方




(初出 R5.7.12 日本WEB詩人会)


自由詩 撃鉄 Copyright たもつ 2023-07-16 06:59:37
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