最期をむかえるならば
リリー
最期を迎えるならば
例えば
深い深い夜
病室のベッドに居て
国道一号線走る運送屋の
大型トラックの音に
ただ耳を傾ける事の出来る
そんな自分でありたいのかもしれない
私は尊いものの様に
思い出を持っている
幼い日そして
青葉の季節に
貴女から愛されたという
そんな邪気のない私の姿が
帰って来る筈もないと思えば
なおの事
尊いものの様に抱いている
白っぽく
ほこりっぽい
南の果の空
その真昼が不気味に目を光らせる
貴女は
うごめく大気に取り巻かれた
ICUのベッドの上で
気管切開で人工呼吸するからだ が
数ヶ所チューブで繋がれたまま
もう 目を見開く
ことも出来ず
毛細血管の破れる音がきこえる
肉塊の限界の叫びをきく
貴女は
何を、
想うことの出来たであろう!
最期を むかえるならば
それを思うに
私は未だ 人間半人前すぎて
とりあえず今晩は
この読みかけの詩集を読んで眠ることにしよう