最期をむかえるならば
リリー

 最期を迎えるならば

 例えば
 深い深い夜
 病室のベッドに居て
 国道一号線走る運送屋の
 大型トラックの音に
 ただ耳を傾ける事の出来る
 そんな自分でありたいのかもしれない


 私は尊いものの様に
 思い出を持っている

 幼い日そして
 青葉の季節に
 貴女から愛されたという
 そんな邪気のない私の姿が
 帰って来る筈もないと思えば
 なおの事
 尊いものの様に抱いている

 白っぽく
 ほこりっぽい
 南の果の空
 その真昼が不気味に目を光らせる
 貴女は
 うごめく大気に取り巻かれた
 ICUのベッドの上で

 気管切開で人工呼吸するからだ が
 数ヶ所チューブで繋がれたまま
 もう 目を見開く
 ことも出来ず
 毛細血管の破れる音がきこえる
 肉塊の限界の叫びをきく
 貴女は
 何を、
 想うことの出来たであろう!

 
 最期を むかえるならば

 それを思うに
 私は未だ 人間半人前すぎて
 
 とりあえず今晩は
 この読みかけの詩集を読んで眠ることにしよう
 
 
 
 


自由詩 最期をむかえるならば Copyright リリー 2023-07-15 06:36:15
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