冷やし中華、始めても
たもつ

両面テープの夏
順番が赤ちゃんの指のように
そのままの柔らかさで並ぶ
あなたは何事もなかったかのように
テープを剥し続けている
食べたい冷やし中華に置かれた
名前の無い名札
息の仕方だけで
魚たちは水槽からこぼれ
生温い近所の海まで泳いで行く
あなたがこのまま終わらないように
中くらいの砂漠をつくる
帽子も二つ用意する
冷やし中華、始めてもよろしいでしょうか
お店の人が言ったとき
テレビは中入り後の勝敗を伝えていた
紙製の白いエプロンをかけて
野菜を収穫しに行くように
多分わたしたち、砂の上を歩き始める
真新しい冷やし中華がテーブルに置かれた
生まれたばかりの言葉で
美味しい、と感想を述べ
あなたは何処か間違っていたのか
体の位置を少し直す




(初出 R5.7.9 日本WEB詩人会)


自由詩 冷やし中華、始めても Copyright たもつ 2023-07-12 07:04:45
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