溺死体
リリー

 
 あれが あなたでしたか?
 傘をささずに濡れた舗道を歩いていた
 男の人

 何処か 空中を見詰めている様で
 視線をたどってみたのですが
 何もなかったので

 変な 人だ と思ってました。

    ※

 生命を自ら捨てて
 泛んでいた男

 夏の間はヨットを結びつけ
 軽いスカートがひるがえる木の桟橋の
 棒くいの間に 打ち寄せられ
 いささかの後悔をしている男

 空気がすんで
 対岸の比良がくっきりと尖っていた
 風の日



自由詩 溺死体 Copyright リリー 2023-07-11 05:06:08
notebook Home