風船
はるな


秒針が力なく明日を告げる、残骸だらけの街を抜けていくと海があるはずだ
けれどもあなたは空気の抜けた風船、口づけても口づけてもすうすうと抜けていく
今日のために買った靴を捨て 鞄を捨て 指輪を捨て
それでもまだまだ重たい明日のために名前を捨てる
名前を捨て、物語を捨て、すこしだけ、期待をもち、紐の切れた風船を、
抱いて抱いて きっと、この明日も、いままでみた明日と同じように
熱すぎて、思い出にもならないと
知りながら、口づけている



自由詩 風船 Copyright はるな 2023-07-10 18:06:14
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