引っ越し
短角牛
一人でふたり分の荷物を整理する
なんて過酷で残酷な(笑)
やり始めるとやっぱり記憶に飲み込まれそうで
それでも時々、楽しくて
壁のシールを剥がせば そこだけ白くて
この輪郭も絵になるなぁなんてセンチになって
お揃いの食器も、もうひとりぶんでいい
物に罪はないから 私の分は使い続けるよ
なぜだかそんなに嫌じゃないの
荷物が運び出され 新居に運ばれていく
逆方向に、不用品を積んだ方のトラックが去っていく
待って、全部いるものなの
でも 一人じゃそれは言えなくて
空っぽの部屋で 思い出が走り回る
空っぽだから その余地があるから
ここで生きていたのだと、拝み倒されそう
それでもいいのに
ありがとう 何に?
ここにはない、全てのものに
私 夢を見れた 私にも 夢が見れた
それが 思い出せたから
暑さの後に雨が降って また晴れて暑くなって
湧き上がる水蒸気は爽やか
役所で手続きを終え 隣の店で冷コーヒー
カランと鳴る氷 涼しき結露
思いが溢れたら こうやって。