灯火
ひだかたけし

夏の少年は
河童が河から上がって来るのを
待ちながら
堤防の先端から飛び込む
海へ

ひたすら

波のうねりに
身を任せながら
浜辺へ向かい
泳ぐ 泳ぐ

そうしてまた

堤防の先端から飛び込む
海へ

繰り返し繰り返し

ある日

河から上がった河童
少年と共に
海に飛び込む

堤防の先端から

波のうねりに抱かれ
身を任せながら
泳ぐ 泳ぐ

共鳴する二人の鼓動

河童の哀しみ 少年の哀しみ

遠く離れ近づき合い
溶かし込み合い
灯火となり

誰も居ない真っ白な

浜辺へ向かい

泳ぐ泳ぐ ひたすら 泳ぐ











自由詩 灯火 Copyright ひだかたけし 2023-06-25 15:58:24
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