克服
ふるる

総勢五十名の審問官が横一列に並んだところ
壮観であるとおっしゃった
かの君

ウツボ座の椅子は非常に座り心地が悪く
座り直すたびにずり落ちる王冠はまるで
重力波へくちばしをくりかえし
くりかえし突っ込む閃光鳥せんこうちょうのようだと
言わねばなるまい

暇に任せてウシロイキムシを眺めていると
同化して自分が
後ろ向きに移動している気分になる
これをするとしないとでは
その後の人生が暗黒物質と白色矮星はくしょくわいせいくらいの違いがある

立派なローブを羽織り
立ち上がりながら転び
見事に受け身を取った
王冠は無音響と共にひとりでに砕け
きらめき浮散する金銀宝飾細工きんぎんほうしょくざいくの破片
無重力下でのそれらは優美な舞踏であったと
お褒めのお言葉

ありがたき幸せ
よい声で鳴く時空カナリアを千羽も飼う狂気
遺言を読み違えただけと
後に知る

帝王学など役には立たず
あまり喋るなとは言われた
ひと言で千の首が飛ぶのだから
万の星が逆光するのだから
億のそら舷退げんたいするのだから

審問官が無言のうちに述べる
ともかく当面は
ココナッペ銀河から流れてくるあの
清らかな星水が
王宮の屋根より高いところにあるという事実を
克服せねばならない





自由詩 克服 Copyright ふるる 2023-06-22 17:22:00
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