履歴書
たもつ

扇風機から炭酸水が漏れている
甘い味はなにもないのに
蟻が数匹集まっている
手触りのする布で拭いて
以前から繰り返していた
冷蔵庫を開ける
三丁目がある
良く冷えた救急車が
大通りを走り抜けていく
父も母も知らないうちに
兄はある朝
ベジタリアンになっていた
バターの隣から取り出した様式に
水の履歴を書いていく
近づけるところがあれば
近づきたかった
最後に父が乗った救急車は
夕焼けの中を
美しいシルエットで走って行った
やがて順番に
誰も帰ってこなくなった
履歴の最後に
今日の日付そして炭酸水、と書く
しばらくして

と一行書き加える
雨のように筆談が始まる



自由詩 履歴書 Copyright たもつ 2023-06-20 14:32:41
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