生の倦怠感
幽霊

 とりあえず、リビングに降りた。犬が窓の外を見つめていた。
 なんとなく、冷蔵庫を開けた。私の好きな食べ物があった。手を伸ばし掴んだ瞬間、つまらないものに思えた。元に戻した。冷蔵庫を閉めた。なんとなく、また冷蔵庫を開けた。やっぱり興味を引く物は無かった。また冷蔵庫を閉めた。
 窓の外はいつものつまらない風景だった。しかし、犬が飽きもせずに窓の外を見つめている。犬の、その背中から寂寥を見出した。絶え間なく鳴っていたはずの時計の針の音が、不意に聞こえだした。それは、私を着実に侵略してゆく死の行進のよう響いた。


自由詩 生の倦怠感 Copyright 幽霊 2023-06-17 01:46:09
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