愛妻弁当
リリー

 「うまそうやなぁ!」
 いきなり頭上から降ってきた補佐の声
 昼休憩時
 開いたわたしのお弁当

 ほうれん草の胡麻和え
 切り干し大根の煮物に出し昆布の千切りまで入り
 かぼちゃの含め煮
 シャケの塩焼きと半熟茹でたまご
 色どり添えるミニトマト
 
 「おかず、取り替えてくれへんか?」
 
 そして交換した、大きなエビフライとミニハンバーグ
 綺麗で可愛いオムレツ
 アクセントに苺
 高校生の娘さんと同じおかず

 五十歳を過ぎる補佐は和食のおかずが好みな様で
 それを伝えられず
 お弁当を要らないとも言えない 優しい夫
 この日
 誰もが思っていた「愛妻弁当」の正体を
 知ってしまった

 誰もが思っていた「愛妻弁当」の正体を知ってしまった
 


 


自由詩 愛妻弁当 Copyright リリー 2023-06-16 12:25:37
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