梅雨に捧げる供物として
そらの珊瑚
青りんごは自ら枝を手放して
地に落下した
それは手のひらにすっぽり包まれるほど小さく
人が食べ頃だと思うには到底未成熟だった
わたしにもっといい耳があれば
落ちた理由が聴こえたかもしれない
もっといい鼻があれば
その実の香り もっといえば
それがもう影も形もない頃の花だった頃の香りを
かぎわけたかもしれない
そのどちらも持たないわたしは
せめてその果実を木の根元に埋めた
ケケケケケッ
おそらくは雨蛙
草むらから一年ぶりの妖怪じみた懐かしい声だった
自由詩
梅雨に捧げる供物として
Copyright
そらの珊瑚
2023-06-14 14:13:46
縦