creep and cheer,
竜門勇気


呪われた僕を
ケーキで祝う君が
大事そうにポケットから
どこかで聞いたような
誰かの聖書を取り出す

僕を宗教が導いていくよ
宗教が僕の手を引いて歩くよ
夕暮れがさっき過ぎ去った街を
宗教と僕が歩く

夏にぼたぼた汗を
コンクリの床に落としていて
それは好きでやってたこと
だからいいんだ
溺れてる。
蟻ん子と名前を知らない気持ちの欠片
空気がほしいんだ。
地面を見てると
いつも俯いてるよね
不思議。本当に不思議だ。

僕を宗教が連れて行く
宗教が街を歩いているよ
滲んだ街頭をいつか見たことがある
君じゃないやつが
手を引いてた
あの日と同じ笑顔が
なんとなく違うものに見える
笑いながら過ぎ去った今日までの日々に
涙でむちゃくちゃになった
メモが混ざっていることをすこし、かすかに思い出す

ポケットの中に
空白だらけの手帳
今日の約束を書いたペンは
途中で掠れたんで捨てたんだ
去年の手帳の上に投げ捨てたんだ
役目の終わったものの上に投げ捨てたんだ
これからどこへ行くんだろう
宗教が僕をどこへ投げ込むんだろう
涙でめちゃくちゃに滲んだ文字は
今も読めるから捨ててないんだよ
そんなことを
無意味だとわかってつぶやいてみる
手を引かれるままに歩いてる
時々走ってる

罪でがんじがらめの僕は
何よりも強いんだ
ベークライトの中のばけものみたいに
光の中で凍っていったんだ
無意味だってわかってる
祈る代わりにつぶやいてみてる
神様のいる場所まであと少し

神様のいる場所まであと少し
神様のいる場所まであと少し
神様の前ではあの時と同じ
その時まではあの日と同じ
宗教と僕はあの日の相似
あの毎日たくさん通った看板にたどり着くまでは
あの人とあの日と相似

すべての神様を僕は殺しに来た悪魔だよ
ラーフラだよ
さあ、すべての信頼を壊してやる
すべての不安を救う存在を壊してやる
君も
僕じゃないみんな
すべてをなにもない宇宙の中にほうり出してやる
あと五メートル
祈る代わりにつぶやいてみる
神様がいる場所まであと少し



自由詩 creep and cheer, Copyright 竜門勇気 2023-06-12 12:51:36
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