ひとつの歌
リリー

 朝のスープの
 セロリの香り

 悲しかった様な気がする昨夜の夢を
 おぼえていない 朝の靄
 一匙ごと かるくスプーンを動かしていると
 一口ごと すくいとられて胸の中へ流れこむ

 人参 たまねぎ 春キャベツにベーコンと
 セロリの茎の爽やかな歯ざわり
 そして手に取るスマホで
 ライン送信する「おはよう」

 あなたからの返信がすぐに来なくても
 後片づけを始めたら
 朗らかなリズム見つけて
 ひとつの歌を 歌うのです

 ひとつの歌は 一人の歌
 二人で分けようと思えば
 歌は形をくずし
 二人の唇にのらないで何処かへ消え去る

 ひとつの歌は
 一人で抱くものだから、
 あなたが恋しくなるのです


自由詩 ひとつの歌 Copyright リリー 2023-06-08 11:00:46
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