ジョンレノンはイマジンと言うのが精一杯だったんだ
ピッピ

千年前
好きだった男がいた

自分の名前が
世界で一番嫌いな名前で
あたしの名前が
世界で一番好きな名前だ、
ということを
いつも言っていた
薄すぎる
珈琲を飲みながら

男の言うことは
なんでも嘘くさくて
でもそれが好きだった

もう
男を好きじゃなくなってから
千年も経ったけど
あたしは
なぜか生きてしまった

変わったことは
嘘が世界から
なくなってしまったことだ

おかげで
よく戦争も起こるし
おかげで
よく平和にもなった

男を好きじゃなくなった理由は
男が嘘を言わなくなったからじゃなくて
男が死んでしまったからだけど
男の言った嘘は
ぜんぶ本当になった

あたしには
もう手をつなぐ人も
いなくなってしまったけれど
あたしには
もう信じるべき嘘も
なくなってしまったけれど
そういえば
男は話し始める前に
よく
イマジン、
と言っていた気がする


自由詩 ジョンレノンはイマジンと言うのが精一杯だったんだ Copyright ピッピ 2005-05-12 12:22:50
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