おかえりなさい2*
ひだかたけし

おかえりなさい おかえりなさい

旅先から帰って来たばかりの僕に
いきなり届く声の響、

おかえりなさい
おかえりなさい

夕に傾き燃え上がった太陽が
一日の最後を焼き尽くし
暗紫色に沈んだ地平の彼方、
また声が戻り来る

おかえりなさい おかえりなさい

僕は本当にびっくりした
暗がり白く浮き上がった家壁に
反射する声 観える声

オカエリナサイ 
オカエリナサイ

垣根と家壁のその間を
渦巻く渦巻くその声音、
余りにクッキリと実体化して
声 女の優しさにつと溢れ

おかえりなさい おかえりなさい

声を意味と共、直に観取っては
陶然唖然と立ち尽くす僕に
近付く懐かしい女の顔、
白く白く浮き上がり

「お帰り、たけし どうしたの?」

僕の思考は停止したまま
キョトンと母の顔を見入っている
その顔と声が分離したまま
僕は未だ観ていたのだ、

響き即意味在るモノ それ自体を










*『VISION.04』(2016-04-13 )・改訂


自由詩 おかえりなさい2* Copyright ひだかたけし 2023-06-06 16:12:04
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