アースランテとの駆け引き(十)
朧月夜
「しかし、アイソニアの騎士、グーリガンが諾とは言いますまい。
彼が敵となることは、貴国にとっても大いなる禍をもたらすと存じます」
ここまでは、祭祀クーラスの思った通りであった。
しかし、ハッジズは表情を変えない。
かつて、アースランテ国内で王位継承の争いを経験してきた者の顔である。
「人一人の命と、一万人の命、汝はどちらが重いと思う?」
「それはもちろん、一万人の命です」
「そうだ。先の戦いで、わが軍は一万余名の戦士を失った。
彼らは帰ってこない。イリアスという娘の命など、
失われた命に比べては、実に些細なものなのだ。些細な」
「あなたは……間違っています。戦いとは、己の命を懸けたもの……」
「そなたも、今イリアスの命を握っているではないか。
拷問をしたのか? イリアスは何と言った? 命乞いをしたか?」
「いえ、それは。彼女は終始毅然としていました」
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クールラントの詩