準備
たもつ


校庭でゼリーが息絶えていた
音も無く
オレンジ色の匂いがした
樹木の間から
整体、の看板が見えていた

看板が見えるのは校庭の高さが良いからだ
と、かつてあなた言った
それはこことは違う校庭の話だけれど
会釈の角度がピアノのように綺麗な人だった
ピアノなど弾けない人だった

ひとつひとつ増えていく
代わりにひとつひとつ
減っていくものがある
過不足無く
わたしはわたし
そして
わたしがわたしでなくなる
準備に違いなかった

何という名前の遊具だったか
車の廃タイヤが並ぶ向こう側で
子供たちが数人
大人になる相談をしている



自由詩 準備 Copyright たもつ 2023-05-30 17:41:15
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