銀紙
リリー

 輝いた肌を白シャツで包み
 黒い目を持ち
 広い肩を持ち
 その人は今日
 目の下や口の周りに軽い擦過傷があり
 絆創膏を貼っていました

 柔道部に所属していて黒帯なのは知っていました

 同じ課で配席の近いその人とは
 内線電話機を共用します
 受話器を手渡す時
 手が触れると
 体温のある
 しなやかな指のきれいな関節に目がとまります

 夕方 同僚と駅裏の国道を渡って
 大きな店舗の酒屋へ寄りました
 冷蔵庫に切らした赤と白のワインとついで買いした
 ウイスキーボンボン

 晩夏の夜
 私は爪にベースコートを塗りはじめると
 一度乾かして
 又一度
 光る薬品でそめ上げながら
 思い浮かべていました
 その人のたくましい腕の力を知りたいと

 リビングテーブルにはチョコレートの銀紙が、
 小さく小さく折り畳まれて
 捨てないままそこに
 有りました



自由詩 銀紙 Copyright リリー 2023-05-29 11:40:02
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