夜に噛むために
AB(なかほど)

  

僕が森に行くのは
そこに隠れている夕焼けを
あの日の夕焼けを見たいからで
森に行けないときは
こうして目を閉じている
できれば
君の息が聞こえるくらい静かな場所で
静かな気持ちで目を閉じている

終わる音



あわてたような目をして
あなたが横を向くので
あたしは
今日もあらぬものを噛んで寝るの
それなりの物わかりのついた
ふうな目をしながら

プラスチックのコップとかスプーンとか
どうして捨てられないんだろうと
あなたががもらしたけど
あたしもそう
握りしめたものを確かめるように
無くしたものを確かめる



僕が森に行くのもおそらくそんな理由で
どうぞ撫でていて下さい
子供のように、母のように、恋人のように、
猫のように、
君にもあの日の夕焼けが滲むまで

そんなふうにして眠りに落ちるまで



  
  


自由詩 夜に噛むために Copyright AB(なかほど) 2023-05-28 18:53:40
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