グラデーション[まち角2]
リリー

 僕の隣に立つ女は長身でショートカット
 切れ長の吊り目が奥二重
 パーマのかかった短いまつ毛
 手に布製のブックカバーを持っている

 ああ、どうして彼女は
 こんな下地の色に淡雪の様な小花散らす
 ブックカバーを持っているのか
 色彩的な風合いやイメージの柔らかさを
 カラーネームで表現するのは芸が無い
 と、
 思ったばかりに悩まされている

 もどかしい気持ちのままJRの車輌降りると
 駅裏のバスターミナルで人混みに見る
 厚地の細長いストール
 その時 僕の目に
 甃から伸びた鉄柱との隙間に生える
 シダ類の雑草がとび込んできた

 紛れもない、この葉っぱの色だ
 指先で まだ赤ちゃんの葉先に触れてみる

 さっき車輌で吊り目の女が持っていた
 ブックカバーの色はスプリンググリーンではない
 初秋あんな所から生えた雑草の吾子が見る夢だ、
 そんな色なのだと言えば誰に
 分かるのだろうか



自由詩 グラデーション[まち角2] Copyright リリー 2023-05-28 16:21:42
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