貴女2
ひだかたけし
雨垂れ 一滴、また一滴
落ちて 落ちつづけ
あなたはグツグツおでん作って
わたしを待っていた
なんて空漠とした空間、
生活感の一切感じられない部屋で
あなたとわたし、
横並び お皿のおでん 食べ
そしてあなたは自殺した友人のことを語った
その遺書のコピー見せながら
そしてあなたは自らの執拗な自傷行為を語った
パンパンに腫れ上がり膨らんだ右腕みせながら
止められないの と 他人事のように
そしてあなたとわたし、
自らの心に魂に深々負った傷
孤独に語り合った
*
深々夜更け
外に面したやたら大きなガラス窓、
カーテンも無く剥き出しのガラス窓、
その無機質が浮き出し在り
内面は外界に晒され
外界は内面に侵入し
白々と時間 ひたすら浮き上がり
あなた 二階から布団 降ろして来て
私たち 同じ布団に潜り込んだ
雨垂れ 一滴、また一滴
落ちて 落ちつづけ
その響、聴きながら
手だけ握り合い肩貸し合い、
あなたは冷静に醒めながら
闇に落ちていき
わたしは光を掴んで
揺蕩い時に身を任せ
一夜の出来事、
そうして
貴女は遠く離れていった、
遠く去っていった