ことば かけら
soft_machine

壊れた時計を
見えない
誰かが動かしていて
磨かれた姿を
にせた貝殻
月に凪ぎ 水辺に浮かぶ

街ですれ違う
あの娘と似た服がきらい
掴んだ鋏を布にすべらし
回転する午後は
苺硝子が気持ちいいなら
午前とのすき間をわたす
橋の下から
蝶々の翅になって 果てしない
戦場を飛びかい
うち寄せ
汀に迷う蟹のゆび尖に
ゆっくり 蒼が澄んでゆく
ことばの かけら

 君のそばで歌いたいんだ

 歌う私は 愛だけだから

ことばは 短いかけらだけど
君のことを歌う

翠の落ち葉が降りやむと
またすれ違う
足あとの陰り
ひびの入った
夕暮を抱きしめる歌を





自由詩 ことば かけら Copyright soft_machine 2023-05-27 13:45:08
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