由比良 倖

6時30分の雨が降る
死者としての百億の昨日とひとつの今日、
全ては過ぎ去る。

そんなことはありえない、と人は言う。
どうして?、と僕は言う。
だってありえないんだから、と人は言う。
どうして?、と僕は言う。

雨が降る 雨が降る
僕は棺の中にいて、
水のにおいを嗅いでいる。

 昨日のことだ、と人は言う。
 僕には別の人生のようだ。
 昨日だよ、と人は言う。
 ……そして笑う。

7時1分の雨が降る、
僕は棺の中。
水のにおいを嗅いでいる。


自由詩Copyright 由比良 倖 2023-05-26 15:53:25
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