田植えのあと
日朗歩野

ビスカッチャになった私は
眩しそうに目を細めている

ただ ひと目でお疲れなのだろうと分かる
それがなんとも言えない いい味わいなのだ

植えたばかりでも
水田では風を見ることができる

向こうから風がくるのが見えて
来た、と思うのと同時に風を感じる

とても確かなことなのだと感心する

そんなことをくり返しながら
水田のふちに座っている

田植えをすませたおじいさんたちの中で
まだおじいさんに届かない私は
ビスカッチャになることで
ようやく横に並べるのだ

風が植えたばかりの苗と私をなでていくたび
くつろぎ 回復していく

みんな黙って
稲が育つことに思いを巡らせている




自由詩 田植えのあと Copyright 日朗歩野 2023-05-22 21:29:52
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