At The Zoo ①
リリー

   ✴︎サルルンカムイ

 丹頂鶴って、アイヌの人たち神様て呼んできたんやね。
 湿原の神!高貴やんなぁ。

 池を模った浅いプールで一羽が まかれて有る小魚を 
 黒い足先添えながら長い嘴でついばみ始める
 まるでフランス料理の皿がそこにあって
 メインディッシュを食するかの様な捌き方
 崩れていく 魚の身に生臭味が感じられない

 もう一羽がその側で 脚をたたみ長い首を背中に預け
 顔を埋めていたが
 写真を撮り始めると頭を上げ柵越しに こちらを見る
 
 目が優しいやんなぁ。
 ほんまや。

 この二羽はつがいなのかな?ふと そんなこと
 彼には口にせず 檻を離れた

   ✴︎アクトレス

 見てえな!「マクジャク」やって、この風格。
 モダンな華やかさに気品もあるなぁ。

 数羽いるインドクジャクの 隣の檻に一羽だけがいて
 高い止まり木で強烈な存在感を醸しだす
 ボディーは鈍い緑色
 風流な真孔雀は 円山応挙の「松孔雀図」や
 曾我蕭白の「松に孔雀図」の襖絵で描かれてきている

 横顔は黒い瞳にアクアマリンのアイメイク
 バサリ、畳んでいる羽のドレスを優雅に揺らし
 写真を撮る私たちに背を向けた

 ほら、後ろ姿も見せてあげるわって言ってるんやで、きっと。
 ほんまやなぁ。宝塚トップスター娘役の貫禄たっぷりやん。

 美しいものを眺め見る時間は飛ぶように過ぎてしまう

   ✴︎火の色のとり

 うわ!凄い赤やな、この鳥。
 「コンゴウインコ」やって。
 ああ、「金剛」やな!

 金剛とは一説にダイヤモンド
 見栄え迫力ある光沢の羽は赤に青が映える

 ね、あの青はエーゲ海やろ?
 「凪」やなぁ、エーゲ海の。やっぱり赤が、メインで青との
   グラデーションが素晴らしいよな。
 ほんなら、あの頭頂部から背中にかけての緑は何やの?
 あれは抹茶やで。

 赤と青が「洋」で 緑が侘び寂びの「和」まさに和洋折衷
 
 写真撮りながら興奮する二人の前にいたのは
 ハルクインコンゴウインコ
 檻には他 三種類がいた

 止まり木で首傾げこちらを見ていた 美しすぎる君は突然 
 内側赤一色の翼を広げ威嚇する
 お前らうるさい客だ、と退散命じられ立ち去った

         ✴︎
 
 いや、ちょっと!これ降ってきたやんか。
 
 昼過ぎから曇り空にあやしい西風が吹き始めていた
 わざわざ持参したビニール傘を公衆トイレに置き忘れたから
 彼との相合傘で 市立動物園の出入口へ急ぎ向かった
 
   
 


自由詩 At The Zoo ① Copyright リリー 2023-05-17 09:01:38
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