五月のうた
リリー
鮮やかな曲線をのべながら
明けそめる五月の湖
暁のシルエットで影絵になる街路樹
炎うつす水鏡と 空は
うっすら みずいろさすらわせ
私を惹きつける
思い出せない遠さの
輝かしい歌のようで
窓辺立ち ちょっと意固地な笑みこぼす
*
緑の息吹き
息苦しい身近さで
樹々の間に
わずかに見えた空
緑と青とが
こんなに遠くはなれた色であったのか
自分の身を染められる緑のないのは
悲しいものだ
*
脂気を十分に落として
黒々とした五月の緑の香をかぐ夜
湯の香と共に緑の香をかぐ夜
さわやかに
私の身体の伸びているのが解る
だが
心の底深く流れるものを
何度か 湯ぶねで洗い落とそうとしたのだったが
風にさらされている胸をひたしていく
*
詩心の寂しさ
湧き出る囁きのすみとおる
五月という
山の美しい季節
花をうたう心を忘れているのに
たえかねて湧き出る詩心よ
お前も 寂しくはないか