五月のうた
リリー


 鮮やかな曲線をのべながら
 明けそめる五月の湖
 暁のシルエットで影絵になる街路樹
 炎うつす水鏡と 空は
 うっすら みずいろさすらわせ
 私を惹きつける

 思い出せない遠さの
 輝かしい歌のようで

 窓辺立ち ちょっと意固地な笑みこぼす

        *

 緑の息吹き
 息苦しい身近さで
 樹々の間に
 わずかに見えた空

 緑と青とが
 こんなに遠くはなれた色であったのか

 自分の身を染められる緑のないのは
 悲しいものだ

        *
 
 脂気を十分に落として
 黒々とした五月の緑の香をかぐ夜
 湯の香と共に緑の香をかぐ夜
 さわやかに
 私の身体の伸びているのが解る
 だが
 心の底深く流れるものを
 何度か 湯ぶねで洗い落とそうとしたのだったが
 風にさらされている胸をひたしていく

        *

 詩心の寂しさ
 湧き出る囁きのすみとおる
 五月という
 山の美しい季節

 花をうたう心を忘れているのに
 たえかねて湧き出る詩心よ

 お前も 寂しくはないか



 


自由詩 五月のうた Copyright リリー 2023-05-11 15:15:43
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