複色のばら
リリー
稚くて
美しくて
二人には白い花びらの開き切らず咲く
真ん中だけ ほんのりピンク色に染めた
薔薇が似合う
交わす口づけもさわやかに愛を誓い合った
いつか二人は大人になり
何ということはなく
涙も出さず 別れていった
むかし むかし
なおそのむかしから
それこそ どんな片隅にでも
ころがっていて繰り返される話
だが、
そんな 何でもないお話が
ふと人の道をあやまらせる
細い 細い 道だから
後もどりの出来ない道だから
苦い涙をのみこんで
鏡の中の自分をいとしみながら
こんな小さなお話の中に
おぼれさる
どこにでもころがっている昔からの
なんでもないお話