影の途
リリー

 あれは満月に近い
 月の創り出す道が湖面に伸びている
 瞳に 孤高の道だと分かっていながら
 光って見えてくる

 湖上の月はいつも
 私の側にいて
 前進することに迷い怯懦する夜
 ミナモに光の道を照らし出す
 それは 影の途

 或るときの月は 心を癒し
 胎内から産まれ出た記憶など誰も知りはしないだろう
 けれども、胎内からこの世界の空気を吸った時と
 同じ よろこびが胸を浸し未来へ
 生きよう と
 導かんとする輝きがあるだろう
 それが影の途

 影の みちが見えた、
 私の指先はアイパッドで写真のシャッターを切った
 冬の夜
 それを貴方のスマホへ送信して

 貴方からの返信が一言、
 「水月だねぇ。」
 穏やかに笑うメッセージだった

 
 



自由詩 影の途 Copyright リリー 2023-05-06 13:51:58
notebook Home