マタイによる福音書
墨晶
- L'impromptu
日照りの荒野で獨り修行していると、またも蝙蝠傘をさした黑衣の惡魔がやってきて傍らで漫談を勝手に始める。わたしの氣を散らせ集中させない
作戰
(
Strategy
)
のつもりらしいが、わたしは
あるがまま
(
Let it be
)
を受け入れる
方針
(
Policy
)
こそが
眞實
(
Truth
)
を多く
發見
(
discover
)
できると云う
敎義
(
Dogma
)
を
確立
(
establish
)
しようと
格鬪
(
struggle
)
している身上なので、
抗わず
(
without Resistance
)
クーラーバッグから
Budwiser
(
水
)
を取り出し、橫になり片肘ついて、ハイライトに火を點け惡魔の漫談に耳を傾けるのだが、槪ねいつもあんまり
面白くない
(
No Satisfaction
)
。從って、あれこれ「ここを直せ」とか「この部分は要らない」とか
細やかな
(
in detail
)
添削をするのだが、惡魔としてはいつも
自信作
(
Self-confidence-work
)
のつもりで來ているらしく、いつもわたしに殆ど
全否定
(
Complete Denial
)
されると
無表情
(
Expressionless
)
になり、
程なく
(
soon
)
タンブルウィードに
姿を變え
(
Transform
)
突風と共に去っ
(
Gone with Wind
)
ていく。
わたしは
(
I
)
知っている
(
know
)
。あの惡魔はわたしの兄だったひとだ。去っていく
後ろ姿
(
Back View
)
を見てわたしは
確信
(
forcely believe
)
した。兄さん、
もう來るなよ
(
Don't come back here again
)
。いや、たまに來てもいいや。いや、やはり來てほしくないかな。いや、だからつまり要するに來る前に電話してくれないかな、兄さん。
自由詩
マタイによる福音書
Copyright
墨晶
2023-05-03 02:58:00
縦