四月蝕
塔野夏子

四月は斑に
私を蝕する
陰鬱な雨と
あまりにもかろやかにあかるい陽射しと

半透明の眩暈に
浸されながら

通草あけびが咲く藤が咲く
咲くものは数多あり
夢みるものも また

けれど
斑に蝕され
そこを風が吹き抜けるいたみを
何で覆えばいいのか
まだわからない

わからないうちに
四月の果てに
うっすらと扉が開いて

やがてはそこから
猛々しいほどの緑の風が吹き込んでくることを
咲いてしまった夢をみながら
待っている



自由詩 四月蝕 Copyright 塔野夏子 2023-04-29 10:41:49
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