人力短歌ソロモン
鷹枕可
ゆく春を惜しみてやがて枯れぬ五弁花の普く摘まず 花薗出でて
神に父に見離され行く曠野にて罵るすだま をとうとごろし
みづからをゆくへしれずへ染め終へて暁の虹掛かりて半円
天使戴冠の昏き地政学へ甘んず歴史とは弑逆が揺れ戻し
汀にて倒れる椅子へ空風の部屋にノア柩なす舟造りあれ
冷凍庫種を保存すに万有を棚に並べぬ 乾燥野菜
零時へと都庁舎時計差し掛かり秩序の枢軸移りて移りぬ
一生涯正しき誤りを記し旧約聖書に落ちぬ人影
群衆を離れて出埃及記土地を択ばず入るユダに家
われとわが青春へ去る風にさらばふりかへる丘、壁に跡なく