溜息橋
アラガイs


小雨/降り出しそうにみえては降らない
安穏とした曇り空にはテレビをニュース番組に切り替える
何か重大な事件でも起きてるんじゃないかと
僕の煩悩に燻る炎に油脂を注ぐのだ
そんなときには夜の街を徘徊したくなる
できるだけ灯りを避けながらむらむらと蠢く羽虫
冷えきった指先に仄かさを吹きつける
外灯に照らされる頬杖橋と溜息橋の境界でたち止まり
欄干にぶら下がりながら獣の息を吐く
ちゅるんちゅるんと暗い空を跨がる雀たち
何気なく歩いていると出店の玄関口にいた
  ふと、汚れた路面から上を見やれば軒下に燕の巣があった
藁の屑からちらほらと見えるのは親鳥だろうか
           壁の巣を嫌い/打ち壊した人間が思い起こされた

夜は再々と過ぎ去っていく
べつにたいした事件も起こらなかった
ニュースからバラエティ番組に切り替えてみる
陽気な出演者たちの笑い声だけが響き
薄暗い空の景色を墨色に暈かして時は進んでいく
うざい炬燵板の上には読みかけの頁が積まれ
見てみないふりのぼんやりと目頭が霞む
日を越せば夜の闇にうごめくのは狢に     インターネット
何度も天気予報をみては予想をくり返す
暮れそうで暮れない日々が
いつになく
  また雨は降るのだろうか    
                       

               


自由詩 溜息橋 Copyright アラガイs 2023-04-21 19:56:13
notebook Home