月の出の頃
リリー

 
 月の出の頃
 舗道が西へ向って遠遠とのびていた
 この途 にも果はあるのか?

 あれは人気観光スポットの側にあるカプセルホテルの様な
 街路樹の一本
 椋鳥が まるで人の心もおどすかのように
 鳴いている

 大気揺れ動き
 降りてくる 黒い背景
 どこからか聞こえるパトカーのサイレン

 声 反響させるものたちが
 茂る葉陰でふと 静まり固まった
 否、錯覚だ
 彼らは黄昏のロマンティシィズムをなすこともない
 憶い出す ことがないのだから

 静まったかに思えた群が
 山の端に沈んだ夕陽 をいつまでも
 追っていたのだが
 
 路上佇む私は声無く 笑う
 
 月の出の頃
 風が
 白々と
 紙くずを巻きあげた 
 この途にも 果はある


自由詩 月の出の頃 Copyright リリー 2023-04-21 05:01:53
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