月の出の頃
リリー
月の出の頃
舗道が西へ向って遠遠とのびていた
この途 にも果はあるのか?
あれは人気観光スポットの側にあるカプセルホテルの様な
街路樹の一本
椋鳥が まるで人の心もおどすかのように
鳴いている
大気揺れ動き
降りてくる 黒い背景
どこからか聞こえるパトカーのサイレン
声 反響させるものたちが
茂る葉陰でふと 静まり固まった
否、錯覚だ
彼らは黄昏のロマンティシィズムをなすこともない
憶い出す ことがないのだから
静まったかに思えた群が
山の端に沈んだ夕陽 をいつまでも
追っていたのだが
路上佇む私は声無く 笑う
月の出の頃
風が
白々と
紙くずを巻きあげた
この途にも 果はある