オムライス
ちぇりこ。

ぼくの犬が消えた日
空には深爪したような月があって
そこだけがぽっかりと
穴が空いているようだったよ

ぼくの犬が消えた日
学校までの通学路はとても長くて
おまえのだらんと長く伸びた
舌のようだったよ
幹線道路では
毎日いのちが咲いていて
幹線道路では
毎日いのちが散ってゆく
蛇腹の猫だけが
いごいごと伸びていたよ
ぼくは猫と目が合ったよ
ぼくは猫と目が合ったんだ
他県ナンバーは知らん顔して
とても忙しそうだったよ

ぼくの犬が消えた日
犬の記憶からぼくが消えたんだ
おかあさんはオムライスを作ってくれたよ
ぼくはオムライスに
ケチャップをかけすぎて
かけすぎたのに
またかけちゃって
しょっぱくなりすぎて
食べられなくなってしまったよ

ぼくの犬が消えた日
ぼくを叱らないで
しょっぱくなりすぎて
悲しい顔ができないぼくを
叱らないでおくれ


自由詩 オムライス Copyright ちぇりこ。 2023-04-14 22:21:00
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