体裁文学
Monk



女の手首から先
指がだらしなくぶら下がる物が
ベッドサイドに備え付けで
つい触ってしまうのも善し悪し
明日にでもカバーを買いにゆくこと、とメモ



処女が食事をとりながら
セックスについて熱心に語っている
精液を一度は飲んでみたいと言い
デザートのチョコレイトケーキを二口で喰う
この処女に名前をつけたが公開するつもりはまったくない



皿の上に盛られた革靴に
肉、という安易な創造力を塗る
バターの替わりになるものが見あたらない
仕方なくフォークとナイフで分解しはじめる
これ以上無駄だ、飽き飽きする、そこまでを挿絵にする



錠剤を噛み砕きながら
極彩色のラインアートを見せびらかす連中
Good evening, high speed night!
加速しはじめた奴から順にゴミ箱行き
町は路面電車の横転事故による混雑で足の踏み場もない



電話が鳴る
電話をたたき壊す
翌日かわりを買ってくる
また電話が鳴る
それを窓の外から5,6人ガムを噛みながらずっと眺めている



窓際に腰をおろし
脳みそを抱えたまま
月灯りを浴びながら
このひっそりと静かな一人きりの世界で
少年は分解したラジオの部品を粘膜に埋め込んでゆく



竪琴の弦をつたう羽虫のつまびく
失われてしまった音楽
死んだ男の指はわずかに届いていない
部屋中の椅子は壊滅している
わずかに弦が震え、時計が灰となり崩れ落ちてゆく



私は道端に勝手に倒れている
いつかの処女が話しかけてくる
以前よりひとまわり太っている
「あたしの魅力があなたに解って?」
私は顔をあげることすらしない
地面には苺のジャムの固まりがボタボタと落ち
蟻が押しつぶされて死んでいる
いまだ名前を知らされない処女は苛立ち
糖分にまみれた指でペニスをしごきだす
私はひどく腹が減ってしまう
射精する気もなく
すばやくその手首から先を切り取る
これでだいたいの物が揃う



新たな部屋の購入を考える
翌日には部屋の窓枠を取り外し引きずっている
その後ろから4,5人がついてくる
最後に感動的な歌を思いつき
署名とともに巻末に書きつける
隣町から大量の拍手が聞こえる
同時に鳥の群れが頭上に飛来し
次々に油に汚れた紙幣となって降り注ぐ




自由詩 体裁文学 Copyright Monk 2005-05-10 22:59:27
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