急傾斜地
たもつ



強い南風だった
私は風になど飛ばされたくないから
作文を書いた
父は私が何をしても
優しい様子で褒めてくれたけれど
作文だけは
夜、眠る前に読んでいたようだった
下水道の早期敷設を要望する会合に
度々連れて行かれ
大人の話はわからないなりに
急傾斜地の所では
列車がよく徐行する地域だった
風はやみ
作文はただの文字に戻っていく
私は父のように
優しい大人にはなれなかった




自由詩 急傾斜地 Copyright たもつ 2023-04-08 15:42:38
notebook Home 戻る