夜長
木屋 亞万
夜は眠れなくなってからが長い
静かに目を閉じて
体を横たえても
時間はなかなか進まない
音楽を聴いても
本を開いても
内容が入ってこない
撥水加工が文字をはじく
することがなくなってから
人生は長い
予定のない一日
何をするか考えるのが苦痛
どこも悪くないのに
体がだるい
やる気が起きない
やりたいこともない
窓を開けたら
割と起きている人がいて
遠い窓の明かりにほっとする
街を歩けば夜中でも人がいる
目的がなければ
海はただの寄せては返す波
行先のない散歩は
もはや徘徊
暗い広い夜の闇
夜空から大きな骨が浮き出てきて
あばらが花を守るガクのように開く
真ん中で心臓が踊っている
動物園の檻の中を
ぐるぐる回るゴリラみたいだ
部屋の中を歩き回って
明け方には眠り
一日の始まりに出遅れる