春の雪
そらの珊瑚

あんまり桜がきれいだから
少し寄り道していこうか
寄り道はいくつになっても
心が踊る

野焼きを済ませたばかりの土手は
あっけらかんとした楽しい黒焦げ
ショートカットにしたばかりのうなじの本当は
自分が見ることが永遠に叶わない場所
霞んだ空に似合いのつがいの鳥影は
目をはなしたすきに、ほら、もう追えない

風もないのに
花びらが散るのは何故?
光の合図に
いっせーの、みたいに
手を離して
命はあそぶ
どこかをめざして
どこもめざさないで
あれは春の雪
神様の手

暖かい雪
溶けない雪

わたしは死ぬことを怖れている

川に落ちた花びらは水のお国へ
地に落ちた花びらたちは
小さな悲しみだから
踏まないように歩いて
家に帰ろうか
ひとりだけど一人じゃない
肩にひとひらの悲しみを連れているから


自由詩 春の雪 Copyright そらの珊瑚 2023-04-05 07:58:58
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